伝説を知っているかのように、白鳥が寄り添う。 撮影/1999・2・6

 鶴見岳、由布岳を間近に望む志高湖(周囲二キロ、水深四メートル)は、灌漑用水として湿地を堰き止めて造られた湖。カイツブリ、アオサギなどの他、冬にはマガモ、コガモなど多くの野鳥が飛来する。
 まだ天地がはっきりせず、人間などいなかった昔、美しい鶴見岳をめぐって、由布岳と祖母山が争った。豊後富士と呼ばれる由布岳は凜々しく、九州第三位の標高を誇る祖母山は、筋骨たくましい山だった。ふたつの山は大地を揺るがして激しく争ったが、決着はつかない。結局、鶴見岳に選んでもらうことになった。
 ふたつとも好もしいだけに、鶴見岳はずいぶん悩んだが、最後に選んだのは美男子の由布岳だった。恋の勝者となった由布岳は、鶴見岳をかたわらに引き寄せ、今にいたっている。別府と湯布院に熱い温泉が噴き出すのは、文字通り、溢れる愛の証なのだという。
 恋に破れた祖母山は、止めどなく流しつづけた涙で鶴見岳の麓に志高湖を残し、さらに、仲睦まじいふたつの山に見られるのはつらいと日向の国境まで退いて、深い木立ですっぽり身を隠してしまった。


◇志高湖は、別府から由布院へ抜ける途中の城島高原にある。JR別府駅から亀の井バスで四〇分の志高湖畔で下車、徒歩一分。車なら、大分自動車道を別府ICで下り、由布院方面へ。看板の指示に従って左折する。