松林に囲まれた池は、びっしりと睡蓮で覆われている。 撮影/1997・3・17

 宮崎市の東北、日向灘に面した阿波岐原にある、みそぎ池。阿波岐原は、日本最古の歴史書『古事記』の舞台であり、祝詞の冒頭では「筑紫の日向の橘の小戸の阿波岐原」と唱えられる。阿波岐原の広大な松林にある江田神社は、男神イザナギと女神イザナミを祀っている。
 天地のはじめの頃、女神イザナミは、たくさんの子供を生み、最後に火の神を生んだが、この時火傷を負ってしまい、黄泉の国に旅立った。イザナミを忘れられず、黄泉の国へ連れ戻しに行ったイザナギは、地上に戻る途中、いましめを破ってイザナミのほうを振り返り、世にも醜い姿となったイザナミを見てしまう。そして恐ろしい追跡にあい、命からがら逃げ帰る。
 ようやく地上へ戻ったイザナギが、黄泉の国の穢れを落とす場所を探しもとめて辿りついたのが、阿波岐原だった。そして、その身を清めたとされるのが、みそぎ池である。
 この禊ぎの際に、左目を洗うと太陽の神アマテラスオオミカミが、右目を洗うと月の神ツキヨミノミコトが、そして鼻を洗うと荒ぶる力の神スサノオノミコトが生まれた。
 この地方には、イザナギのみそぎ伝説にならい、海につかって身を清めて、波をかぶった砂を集め、持ち帰って家を清める、「浜下り」という行事がある。


◇みそぎ池は、市民の森病院のすぐ前にある。バスで行く場合は、宮交シティバスセンターからオーシャンドーム行きに乗り、市民の森病院前で下車。タクシーなら、宮崎駅から約一五分。